5月に改正宅建業法(宅地建物取引業法施行規則)が施行され、不動産取引の電子化が進むのではないかと期待されています。
新型コロナウイルス感染拡大以降、数多くの企業でDX化が進み、印鑑の捺印が不要になるケースが増えました。
不動産のDX化
不動産については、たとえばアパートを賃貸で借りるならば、顧客はアパートを内見し、不動産会社の事務所で契約書に署名捺印してはじめて住むことができます。
さまざまな業種の中でも、不動産業界はDX化が遅れていると言われてきました。
重要事項説明書などが要因か
遅れの理由は重要事項説明書がひとつとして挙げられます。重要事項説明書とは法で定められた事項について、これらを記載した書面を交付して説明をするというものです。
そもそも、宅地建物の取引は権利関係などが複雑であり、専門知識を要するものが多数あります。その中、一般の買主は知識や経験が乏しいため思わぬ損害を被ることが過去には幾度となくありました。
こうしたトラブルを防ぐため、物件に関して、法令による利用上の制限、契約の解除に関する事項、損害賠償額や違約金に関する事項ほか、飲用水・電気及びガスの供給、排水のための施設の整備状況といったことまで、法で定められた事項について、有資格者(宅地建物取引士)が顧客に説明することが法で定められています。
2021年、重要事項の説明行為は対面でなく、オンラインで行ってもよいと法整備が進みました。ただ、重要事項説明書や契約書など、不動産関連の書類は電子化が認められず、顧客は不動産会社に足を運び署名捺印しなければなりませんでした。
今回の改正で、不動産関連の電子契約書が全面解禁されます。不動産大手企業がけん引し、DX化は進みつつあります。今後、中堅や零細の不動産会社までDX化の波が及ぶか。注目したいところです。
重要事項の説明と電子化
従来、重要事項の説明は対面で行うことが義務付けられていましたが、2021年には、オンラインで行うことが認められました。今回の改正では、さらに重要事項説明書の電子化も可能になります。ほか、契約書など、不動産取引に関する電子契約書が全面解禁されます。
DX化が進み、契約書などの書類が電子化されると、これまで顧客は不動産会社などに出向き複数の書類に署名や捺印をしなければならなかったのですが、この手間が軽減されます。
ここでポイントとなるのが電子印鑑です。現在、対面で実際の書類に署名捺印、本人確認を行っていますが、改ざんされることなく本人の意思でサインを行う必要が出てきます。不動産会社の中には、IT企業と業務提携し電子署名の機能を活用するところが増えています。
たとえば、マイナンバーを利用して実印相当の本人確認ができる機能や、電子署名ができる機能がすでに開発されています。
電子化は顧客の手間だけでなく、不動産会社にも契約業務の効率化や書類保管業務の削減というメリットにつながります。また、書類の郵送や出張にかかる費用の抑制も可能になります。
不動産の関連書類の電子化の効果は大きいと考えられています。というのも、分譲マンションや戸建ての場合、契約書以外にも様々な書類が発生します。ある大手不動産会社の場合、契約から入居までの顧客に渡す関係書類は約1,000枚にものぼります。
書類の電子化により、年360万枚の紙を削減できる見込みといいます。加えて、売買契約書の印紙代については顧客の負担を含むと年に1億円以上のコスト削減につながります。さらに、書類情報のシステム入力や照合作業が減ることで、契約業務時間も年3万時間短くなる見通しだといいます。
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